インタビュー#2:筑波大学大学院 生命環境科学研究科 教授 宮崎 均

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なめがたオリジナルの機能性食品の開発に向けて

宮崎 均 筑波大学 大学院生命環境科学研究科 教授

去る2012年(平成24年)10月3日に、『農業・食と健康』をテーマに筑波大学と行方市は共同研究契約を締結し、現在、恊働で行方産の野菜の機能性を活かした商品開発を目指しています。宮崎先生は、8年前に食による疾病予防・改善を目指し食機能探査科学分野を立ち上げました。宮崎先生が提案する食機能探査科学と行方市との関係についてお話頂きました。

宮崎 均 教授

【ご経歴】
  • 1980年3月 筑波大学 第二学群農林学類 応用生物化学 卒業
  • 1985年3月 筑波大学 農学研究科 応用生物化学 修了
  • 1985年〜1993年 筑波大学応 応用生物化学系 遺伝子実験センター講師
  • 1993年〜2004年 筑波大学 応用生物化学系 遺伝子実験センター 助教授
  • 2005年〜 現在  筑波大学大学院 生命環境科学研究科 教授
【受賞】
  • 1986年 井上研究奨励賞
  • 1996年 つくば賞

1. 今回の行方市との取組についてご説明下さい。

行方市とは、2012年(平成24年)10月3日『農業・食と健康』をテーマに共同研究契約を締結しました。筑波大学は、これまでに16の地方自治体との連携協定を締結しています。行方市とのお付き合いは、契約締結の数年前から行方市役所の経済部農林水産課六次産業推進室と、私達が設立した「コンソーシアムつくばライフ」のメンバーから紹介されたのが発端です。

行方市が新たな農業振興を目指していることや、筑波大学の知財をどの様に活用出来るかなどの相談を受けて、私の研究成果が行方市の農業振興に使えるのではないかと考えてみました。これまでに何度も話し合いをし、打合せのために行方市の玉造、北浦、あるいは麻生地域を訪問して行方市の産業、市民の健康状態や暮らしの情報などを直接見聞きする中で、共同研究契約のテーマを『農業・食と健康』と決めるに至りました。

農業は行方市の基幹産業です。行方市の最大の特徴は、野菜・果樹を合せて60品目もの生産をしていることです。筑波大学が持つ知識・技術を導入すれば、これらの農作物に高付加価値化による新たな商品開発も可能です。また、行方市の健康増進計画の策定業務に携わる中で、行方市が茨城県内で2番目に生活習慣病有訴者並びに予備軍が多い地域であることを知りました。食事は人々の健康の原点でありながら、現代では食事の不適切な量や質、あるいは不規則な摂取時間が生活習慣病を招いています。農作物の豊富な行方市において、地元の食材が地元の健康の維持・増進に寄与できるような仕組み作りに、筑波大学の研究成果を投入したいと考えています。

2. 先生の研究室である食機能探査科学とはどういう学問ですか。

8年程前に生命環境科学研究科の中に立ち上げた研究分野です。「食品・畜産業・養殖業・医薬品などの産業へ、有効な人材の輩出や研究データの有効利用を目指し、食素材から疾病予防・健康向上に結びつく成分を見出す(探査する)と共に、その作用・仕組みを分子レベルで明らかにする(探査する)。」と定義しました。

2004年(平成16年)、私は筑波大学の北アフリカ研究センターのスタッフとなりました。最初の共同研究対象国であるチュニジアが、世界第四位のオリーブの生産国であることを知りました。そこで、まずはオリーブを研究対象とすることにしました。食の機能性をテーマにした食機能探査科学という分野は、この様なきっかけで立ち上がりました。

北アフリカは乾燥した地中海性気候で、日本の気候とは全く違う地域です。当初は、そこで成育する面白い、珍しい植物をターゲットにして、疾病の予防につながる化合物を見つけようと考えていました。しかし、珍しい植物から新規の化合物をというのは、食の世界では受け入れられないことを体験させられました。当たり前のことなのですが、食文化として成立している食材の中から、一般には知られていない化合物を見つける。あるいは既知の化合物から新たな機能性を見出すという戦略に方向転換しました。実際に始めてみると、既知の化合物でもその作用や働く機序が驚くほど明らかにされていないことが分かってきました。現在はいくつかの食材に絞って研究を進めています。その中には発酵茶に含まれる新規成分や赤ワインのよく知られた成分もあります。この研究分野を始めると、色々な企業からのコンタクトもあり、様々な食物の中に含まれている化合物の中から取捨選択して研究を進めています。

3. 行方市における食の機能性商品の可能性は、どういう部分にあると考えられますか。

スーパーマーケットに行けば様々な野菜ジュースが販売されています。しかし、100%国産の野菜ジュースは余り見たことがありません。むしろ原料の多くは海外からの輸入に依存しています。行方市では上述したように、60品目の果樹・野菜が生産されています。国内外を問わず地域オリジナルの野菜ジュースが生産できる大変ユニークな自治体です。2013年9月19日付の日経ウーマンによれば、小型スーパーで野菜ジュースを探すと、冷蔵品や常温品合計で54種類もの野菜ジュースが売られているそうです。消費者のニーズとして野菜ジュースは多様化されているようです。筑波大学との連携により、行方オリジナル且つ機能性を実証した野菜ジュースの生産が可能になると思います。同様に、野菜スープや野菜ドレッシングなども商品化できるはずです。

4. 行方市との共同研究契約における今後の展望について教えて下さい。

私の行っている食機能探査科学研究は、食品産業、畜産業、養殖業、医薬品業などへ、様々なリソースの有効利用を目指しています。最終的に人々や家畜に食され、その健康維持・疾病予防に貢献することを考えています。行方市と一緒に、行方産のジュースやスープなどの商品化を企画し、その中で主として機能性の解析について後押しができればと考えています。私の同僚の先生方からも協力の約束を頂いており、私達筑波大学側の準備は出来ている状況です。

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