インタビュー#5:筑波大学 大学院生命環境科学研究科 准教授 吉田 滋樹

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「食品素材の能力を見極め、新たな食提案へ!」

吉田 滋樹 筑波大学 大学院生命環境科学研究科 准教授

吉田滋樹先生は、筑波大学の村上和雄名誉教授の研究室ご出身で、分子生物学的な手法で食品の可能性を追求され、素材が持つ新たな機能性を導き出す研究を進めています。また、新たな食品の相性を見つけ出し、食品の可能性に関するご研究を推進されています。私達が生きるために欠かせない「食」を、分子生物学的にカラダに良い、健康になれる食の開発をされています。

【ご経歴】
  • 1986年3月     筑波大学第二学群生物応用化学科 卒業
  • 1986年 〜 1988年 筑波大学環境科学研究科修士課程 修了
  • 1988年 〜 1990年 筑波大学農学研究科応用生物化学博士課程 単位取得満期退学
  • 1990年 〜 1992年 日本大学農獣医学部園芸化学科 助手
  • 1992年 〜 1998年 筑波大学応用生物化学系 助手
  • 2000年 〜 2004年 筑波大学応用生物化学系 講師
  • 2004年 〜 現在   現職

1. 吉田先生のご研究についてお聞かせ下さい。

私の研究は、昔の農学部で言う農芸化学科の食品科学の範疇になります。宮崎均先生は、食べ物の中の機能性成分や、カラダの中での伝達機構をご研究されています。僕は一部宮崎先生と重なる部分がありますが、もう少し幅広く素材そのものの分析から、場合によってはそれらを加工するために発酵用の微生物を見つけ出し、酵素や微生物を使って従来品とは違う、マーケットのニーズに合わせて変革させたりしています。素材の機能性成分を使うにはコストが必要です。食品として利用するためには、コストを下げる方法を見つけ出すことも必要です。
例えば、オリーブの中に入っている機能性成分で、ヒドロキシチロソルと言うポリフェノールがあるのですが、化合物としてはもう少し大きい前駆体の中にヒドロキシチロソルが入っています。オリーブの中には前駆体の量は凄く沢山あるのですが、ヒドロキシチロソル自体は前駆体の量に比べて少ない量しかありません。ヒドロキシチロソルだけを抽出しようとすると、コスト的に見合いません。そうすると、ヒドロキシチロソルだけを選択的に抽出することが別の方法で出来ないかと考える訳です。ここで、微生物を使えないかと考え、丁度この春に修士を修了した学生が研究していました。彼が選択的にヒドロキシチロソルを抽出する微生物を見つけ出す研究をして、見つけ出すことが出来ました。
ただ、学術的・技術的には確立されましたが、この技術がそのまま商品作りに活かせるかと言うと、まだまだ改良の余地があると思われます。

2. 吉田先生がご研究されている食品加工ついて教えて下さい。

今、オリーブからヒドロキシチロソルを抽出する話をしましたが、この技術を取組もうとすれば2段階の手間が必要です。第一段階で微生物を培養して、第二段階で微生物をオリーブの葉にくっつけてヒドロキシチロソルを抽出する訳です。これら2つの段階を1つに合わせることが出来れば手間やコストを減らすことが可能になります。つまり、オリーブに直接この微生物を感染させてしまい、収穫する際には感染したオリーブを穫れば、ヒドロキシチロソルが多く含まれたオリーブを収穫出来るはずです。つまり、家畜飼料のサイロのイメージです。サイロは、牧草を密封させて乳酸発酵させている訳ですが、微生物を別に培養することなく、直接ターゲットに感染させることが出来れば良い訳です。この様な技術開発も我々が取組んでいる食品加工の一つです。
また、今は世界規模で時間と距離が短くなっていますから、従来日本では扱っていない素材も日本に入って来ています。そう言った食材の栄養機能の分析や機能の評価をしています。どうすれば利用出来るのか、保存性や加工法などの開発を進めています。当然、コストについても実用化にとって大きな課題ですので、研究を進める上で常に考えています。
以前、甘酒の話で、この湿式石臼を使う話をさせて頂いた時には、通常の甘酒では内容物が沈殿して飲み難いのを改善するために、この湿式石臼を使えば沈殿物のない甘酒を提供することが可能になることを説明しました。
素材本来の大きさは選びません。石臼に入る大きさに刻んで挽けば、野菜でも果物でも何でもジュース状に加工することが出来ます。皮や芯が含まれていることが判らないような滑らかさで加工しますので、アイスクリームやジェラートなどに用いることが出来ると考えられます。

3. 食品加工において事前に考えておく必要がある課題について教えて下さい。

食品を加工して付加価値を増加させることは、農畜水産業従事者の収入を増やす一つの方法だと考えられますが、可能であれば原則加工しないですむことが良いと私は思っています。加工するためにはコストや時間が必要になりますし、廃棄物等の残さや使われない部分が出る可能性があると言うことです。
こんなことを言ってしまうと、自分の仕事を否定するような話になるのですが、産直の販売所ではなく、産直で宅配。例えば、行方野菜の十種セットの様な形で流通させるのが基本だと思っています。うちは素材が強いんだからそれをストレートに出す。と言うことです。今、話をした通り、加工は手間と同時に廃棄物が必ず出ます。素材を100%使い切る加工法であれば良いのですが、見た目の形や色目、売れる仕組み作りをしてゆくと必ず廃棄物が出ます。つまり、素材の利用率が下がると言うことです。
それと、路地作物には端境期があります。一年間、安定的に加工原料を手にすることが難しい素材の場合、原料が手に入らない間は加工する機械を遊ばせて置くことになります。植物工場的に素材が工場で生産されて常に手に入る状態があれば問題はありませんが、原料素材の安定的な入手方法は一つの課題です。
また、安定的に供給される良い素材を見つけ出したとして、その素材を生産するまでの期間は、収入が断たれることになります。例えば、農家が今までの生産方法を継承し、新たな作物を畑で作った場合は、それ程問題ありませんが、果樹のように植え替えが必要で、結実するまでに数年かかるようなものでは、目的の素材を作り出すまでに数年かかります。また、この期間に売れるはずだったものが売れなくなることだって考えられる訳で、これらの時間差が大きなリスクとなって来ます。
ここで掲げた話以外にもいくつかのリスクが考えられますので、加工品を作る際にはきちんと目的や売先などを事前に明確にしておく必要があると思います。

4.行方地域の農畜水産物について、何かアイディアを頂けませんか

まず、茨城県内では現在2件の依頼が来ています。一つは水戸市近郊からお茶の話。もう一つは県北地域から納豆の話を頂いています。市町村レベルでの話は今のところ来ていません。
茨城県の内水面水産試験場から、星野教授と一緒に漁業飼料に関する研究をしています。ω脂肪酸と言うものがあるのですが、これは微生物により作られていると言われていて、乳酸菌を入れた餌を与えると、身質のω脂肪酸成分が歴然と上がるのです。それらの機序や有効性について研究を進めています。
霞ヶ浦の水産品として有名なのは公魚ですね。公魚についてご存知でしょうか。公魚はサケ目キュウリウオ科の魚で元々汽水域に生息していました。霞ヶ浦も昔は海の水が入って来る汽水湖であり、公魚は海と川を行ったり来たりしていて、サケ様な動きをしていた訳です。公魚は、霞ヶ浦以外にも山中湖や洞爺湖や色々な湖に居るのですが、これらは霞ヶ浦(北浦)で陸封種として作られた公魚が移植されています。山中湖や諏訪湖・洞爺湖など国内27の湖に生息する公魚のルーツは霞ヶ浦(北浦)にあるのです。
さて、公魚は白身で淡白な魚であるため、オイルサーディーンの様なオリーブオイル漬には適さない様に思います。例えば素揚げして香辛野菜やハーブなどとマリネ液で和える様な食べ方はいかがでしょうか。また、衣にチーズなどを加えたフリッターも美味しく食べられるのではないでしょうか。

5. インタビューを終えて。

実は今回の吉田先生のインタビューでは、ここでは書ききれなかった部分が沢山あります。お茶の実から油を作る話や、緑茶にフレーバーを付けたり、緑茶を紅茶のように見せる技術など、様々な食品加工についてお話頂きました。それらの商品開発を行う時、どの様な視点でどの様な方法でコストや販売環境などを考え、売れる商品作りについての話を頂戴しました。これから行方市での加工品づくりに是非、吉田先生のご協力を得て、行方地域にとって最良の商品づくりを目指せると期待しています。

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