インタビュー#4:筑波大学 大学院生命環境科学研究科 教授 北村 豊

プリント

「食品素材が持つ機能を、最大限に発揮出来る加工技術開発を目指して」

北村 豊 筑波大学 大学院生命環境科学研究科 教授

食 材に何らかの加工を施すと必ず廃棄物が出ます。販売を目的に形、色、美味しさを追求すると、利用出来ない部分が何かしら出て来ます。野菜の根や茎、葉な ど、素材により排棄される部分は変わって来ますが、本来は食べられるものであり、廃棄物としてゴミにしてしまうことは日本人としての「もったいない」に反 する行為です。北村先生は、食品加工において限りなく廃棄物を減らし、それでも廃棄物として処理しなければならない時、廃棄物を再利用する食の3Rを実現 する仕組みの研究者です。私達ヒトにとって不可欠な、食品素材が持つ機能を最大限に発揮出来る加工技術により、美味しく、楽しく、健康になれる食品加工技 術を研究されています。

北村2012-調整

【ご経歴】
  • 1986年3月     筑波大学大学院農学研究科修士課程 修了
  • 1989年3月     筑波大学大学院農学研究科博士課程 単位取得退学
  • 1989年 〜 1993年 新日鉄化学株式会社 システム栽培開発部 主任
  • 1992年 〜 1995年 東京農業大学 生物産業学部 助手
  • 1995年 〜 1997年 東京農業大学 生物産業学部 講師
  • 1997年 〜 2003年 島根大学 生物資源科学部 助教授
  • 2003年 〜 2011年 筑波大学 農林工学系 助教授
  • 2011年 〜 現在   現職

1. 北村研究室について教えて下さい。

私 の研究室は、昔の農学部で言う農産加工学とか、農産機械学と言う分野なのですが、収穫された農産物の加工技術を研究している研究室です。時代と共に食品加 工のニーズは多様化が進み、様々な加工技術の開発を必要として来ました。それらの技術開発に新たな仕組みを提案して、よりマーケットから必要とされる加工 プロセス確立を目指して研究開発を進めています。研究のキーワードとして、農産加工学、農産機械学以外に、食品工学、食品衛生学、農業施設学など駆使し て、マーケットに合わせて加工技術の開発を行っています。

2. 北村研究室で取組まれている加工技術について教えて下さい。

今、 行っているいくつかの研究テーマの一つとして「粉砕」技術を研究しています。農水省の委託事業を活用して、新規需用米に対する粉砕技術の応用を目指してい ます。新規需用米は主食米とは違い、加工を目的として生産されるお米です。主食米よりもタンパク質や脂肪、胚芽に特徴あるお米です。その他の特徴として は、田んぼに直播き栽培、多収穫品種であるため、主食米よりもコストを減らすと共に、良好な生産が出来ると主食米の約2倍の収穫が可能なお米です。
更に、インディカ米系列のお米であるため、稲穂が倒れ難いと言う特徴も持っています。
この新規需用米を活用する一つの方法として、「湿式粉砕技術」を確立しました。この技術を用いると、生のお米を牛乳の様に飲むことが出来ます。水と一緒に 改良型石臼に玄米を投入すると、極微細な粒に挽くことが出来ます。挽いた後は牛乳の様に白い液体になります。この原液を直接飲むことも出来ますが、飲み難 い場合には何らかの味付けをして飲むことも出来ます。デンプンが主成分ですから加熱するとトロミが出て来ます。トロミが苦手な人は加熱せずサラサラなまま で飲む事も出来ますので好みにより色々な加工が可能になります。玄米から作るので、栄養価の高い飲み物のようにお米を加工することが出来ます。

石臼と聞くと、通常は蕎麦の実を挽く場面を思い出しませんか。私達が開発した石臼は湿式で水と一緒に玄米を挽くことで牛乳のようなお米のジュースをつくりだすことが出来ました。
石臼を低速で動かしお米を挽くことで、摩擦熱による熱が伝わらない、素材そのものが持つ機能性成分を失わない、タンパク質やデンプンなどの主要成分も変質 させることなく微細化出来る、など様々な長所を有しています。また、水と一緒に玄米を挽くことで、出来たお米のジュースは安定性が高く、米粉を水で溶いた 時のように数分で沈殿するようなことはありません。
私達ヒトの舌は20μmよりも細かく粉砕されると、原料を舌に感じることなく、水を飲むようにスムーズに飲むことが出来るそうです。私達が作った湿式石臼は20μmよりも細かく挽くことが出来るので、舌触りの良いスムーズなジュースとして玄米を提供することが出来ます。

以前、甘酒の話で、この湿式石臼を使う話をさせて頂いた時には、通常の甘酒では内容物が沈殿して飲み難いのを改善するために、この湿式石臼を使えば沈殿物のない甘酒を提供することが可能になることを説明しました。

素材本来の大きさは選びません。石臼に入る大きさに刻んで挽けば、野菜でも果物でも何でもジュース状に加工することが出来ます。皮や芯が含まれていることが判らないような滑らかさで加工しますので、アイスクリームやジェラートなどに用いることが出来ると考えられます。

3. 先生の石臼による加工は栄養的に見ると相当に有利なものと思われますが。

今、 学外の大学の薬学の先生と共同研究を進めようとしています。例えば、野菜や果実など皮と実の間には私達ヒトに有用な栄養成分が沢山あります。また、果物の 芯や種にも私達ヒトに有用な成分が沢山あることが判っています。私が開発した湿式石臼で微細化すれば、これらの栄養成分や酵素活性などをそのままにジュー ス化させることが出来ます。
ただ、この石臼にも欠点はあって、一度に多量の素材を挽くとなると、複数台連ねるような仕組をつくる必要があります。量産化のための装置開発や商品価格と製造コストのバランスをとることが今後の課題と考えられます。

4. 先生が目指した石臼加工のゴールはどう言うものでしょうか。

食 品を加工して商品を作り出すことは、何らかの廃棄物が生まれます。例えば、従来のジューサーで林檎ジュースを作る時、皮や芯、種などは廃棄物となり、 ジューサーの外に出されます。これら廃棄物の中にも私達ヒトに必要な栄養成分を含んでいます。湿式石臼で20μmサイズに粉砕してしまえば、皮や芯、種な ども素材全てをジュース化することが出来て、口当たりの良いものがつくれます。加工による廃棄物を無くす。無くすことが難しければ最小に留める。どうして も出てしまう廃棄物は更にバイオリソースとしてバイオ燃料や肥料・飼料などに加工して最終的に素材全てを使い切る仕組み作りを目指しています。

5. インタビューを終えて。

北 村研では、食材を有効に活用する仕組み作り(プロセス研究)を進めていて、食材の能力を100%。余すところなく活用することで、手間やコストを低減し、 より良い商品開発に通じる加工技術開発を目指されています。今回のインタビューではバイオマスエネルギー生産の部分はお話頂けませんでしたが、筑波大学が 進めるバイオマスエネルギー研究の一旦を担われている研究者のお一人です。今回のインタビューではいずれの技術も実用化に近いご研究をされていることをご 紹介頂きましたし、勉強させて頂きました。

関連記事

ページ上部へ戻る